君が僕にくれた余命363日

焦ったように両手を口で押えた成田さんは、謎にきょろきょろとあたりを見回し僕の隣に来た。


「ここに隠れてたんだね」
「うん」

僕と少し距離を置いて座る成田さんを見た。


「ジローは?」
「図書室があるほうの棟に行くのが見えたからこっちに来た」
「じゃあまだ安全かな」
「そうだね」


力を抜いて、再び壁にもたれかかる。
成田さんも同じように力を抜いた。


「ドキドキするね。かくれんぼ」
「そうだね」
「でも、久しぶりにするとやっぱり楽しい」
「僕はもう十分だよ」
「スリルを楽しもうよ」
「それが疲れる」


普段から刺激なんて必要としていないタイプだ。

毎日同じことのくりかえしで、安全安定がいちばんだと思っている。


「もったいないなぁ。どんな状況でも楽しんだもん勝ちだよ」
「僕の分も楽しんでくれたらうれしいよ」
「じゃあ、一緒に勝とうね。美玲すぐ見つかっちゃったみたいだし」
「さすがに早すぎ。幼なじみだから読まれてたのかな」

「ジロちゃんならどんなに遠くにいても、美玲の匂いとかたどっていきそう」
「たしかに。木下さんに関してだと、警察犬より鋭い嗅覚発揮しそうだ」


言って、吹き出す。

想像できてしまうのがおかしい。
想像できるほど、ジローと時間を過ごしてきたんだ。

木下さんの反応も目に浮かぶ。

僕はいつのまにか、ここまで深く他人と関わっている。


「瑞季くんが楽しそうでうれしい」
「…………そう」


考えて出たのは素っ気ない返事だけ。

否定することもできなければ、肯定するのもなんだか悔しかった。

ジローたちのことを思い出して自然に笑みがこぼれた。

もう僕にとって、それくらいの人で、一緒にいて楽しいと思っているんだろう。