成田さんに教わってだいぶ使えるようになったスマホでメッセージを確認する。
《ひとりめ見っけ》
その文字と一緒に、悔しそうな表情をしている木下さんの写真が送られてきていた。
もう見つかったのか。
開始から10分も経っていないのに。
あと、木下さんの後ろに映る体育館から見て、講堂あたりに隠れていたと把握できた。
講堂はこの場所から距離がある。
まだ僕が見つかることはないだろう。
安心してスマホを閉じる。
壁に背を預けて時間が過ぎるのを待つ。
……何してるんだろうな。
少し前の僕じゃ考えられなかった。
クラスメイトと話すだけでなく、放課後に遊ぶなんてさ。
拒否することもできたはずなのに、それをせずにズルズルとなんだかんだ一緒にいるようになった。
仲良くなりたくないって思っていたのに。
ジローと木下さんは仲良く101歳まで生きるとわかったからだろうか。
余命を知って、笑えたのは初めてだった。
さすがにそこまで長生きだと怖いと思わない。
むしろ安心できたくらいだ。
でも、成田さんは……。
――ガラッ
急に扉が開く音が聞こえて、ヒュッと息を吸った。
勢いよく開けられたドアはゆっくりと閉められて、人の気配が近づいてくる。
ジローか?
いや、吹奏楽部の部員という可能性もある。
用がないと入らない部屋だから。
だとすればかくれんぼの鬼になっているジローの可能性も十分に高いけど。
近づく足音に鼓動が速くなるのを感じながら息はひそめて、ドラムの隙間から確認しようとする。
誰かはわからない。
誰だ……?
思わず重心を少し動かした時、ぶつかったのかドラムスティックが落ちた。
「わっ」
床とドラムスティックがぶつかる音に反応した人影が声を上げる。
その声で誰が入って来たのか、顔を見なくてもわかった。
「成田さん」
「え!?瑞季くん!?」
「しー、静かに」
大きな声を出す成田さんに言葉とジェスチャーで伝える。