君が僕にくれた余命363日


僕はクラスメイトとも距離を置いて深く関わらないようにしている。

それを察してか、ただ地味で暗いぼっちのクラスメイトに関わりたくないだけか。

どちらにしろ、必要最低限話しかけられることはないというのに。

目の前にいる成田花純は僕を真っ直ぐに見て、僕の名前を呼んでいる。


「……いない、ですね」
「でしょ?」


成田花純はニコッと微笑むと、右手を出す。


「席近くなったことだし、これを機に仲良くしてね」


正直、仲良くなるつもりはない。

僕は誰とも仲良くならない。

距離感は大切だ。


だからこそ、

「……うん」

素直に頷いた。


これは持論だけど、距離をとりたい時ほど、余計な否定も肯定もしないほうがいい。

軽く流すくらいがいちばんちょうどいい。

そうすれば、だいたいの人は反応の薄いつまんない人間だと思ってくれる。

この世代なんて特にそうだ。

一緒にいて楽しい人を求める。

自分にとって都合のいい、得のある人との関係を築きたがる。

少なくとも、僕が今まで出会ってきた人間はそうだった。


「ほら」
「え?」
「え、じゃなくて。手を出したら握手でしょ」


……握手なんて、普通しないだろ。

席替えで席が近くなってよろしくの握手なんて。

余計な否定も肯定もしないほうがいい、と思っても触れるとなると話は別だ。



「それは……」
「照れてるの?」


首を傾げながら僕の顔を覗き込むように見てくる。

よくそんな恥ずかし気もなく、ストレートに聞けるな。

僕たち、初めて話すんだよ?

しかも僕は、クラスでも目立たないし、友達もいない地味で暗いクラスメイトだろ?