「じゃん負けが鬼ね」
「よっしゃ勝つぞ!」
「あたしも勝ちたい!」
「僕も」
ここはぜったいに勝つ。
「みんなやる気だね。いくよ。じゃーんけん……」
成田さんの合図でじゃんけんをする。
結果はすぐに出た。
「くそ……俺のパーが……」
「やった!」
「ジローのひとり負け」
「よかった……」
ジローが一発目で負けて、鬼に決まる。
僕は胸をなでおろした。
どこかにじっとしてやり過ごすだけでなんとかなりそうだ。
「じゃあジロちゃん、1分後に探しに来てね」
「すぐに見つけてやるからな」
「これは勝ち確だわ」
木下さんの言う通りだ。
「ジュースありがとう」
「おまっ、ぜったいにいちばんに見つけるからな」
「はいはい」
それフラグだから。
見つからないやつでしょ。
有利な位置に余裕が生まれて、走り出す成田さんと木下さんとは違い歩いて移動する。
学校内とはいえ、教室は施錠されているところが多い。
とりあえず1分なんてすぐだからそう遠くにはいけない。
考えた結果、とりあえず階段を上って踊り場で窓からジローを確認する。
スマホを見ているジローは時間を計っているのだろう。
僕もスマホで時間を確認すると同時にマナーモードにした。
そして1分経った時、ジローは動き始める。
僕がいる場所とは違う方向へ走り出す。
まだ隠れる場所を探していると見て、その間に見つける作戦なんだろう。
とりあえず僕の所へは来ないと確信し、隠れる場所を探す。
4階に来ると、移動教室で使われる教室が多いため人はいない。
すべての教室のドアを確認するとやっぱり施錠されていたけど、いちばん奥の教室は施錠されていなかった。
音楽準備室で楽器が多い部屋。
死角にもなるな。
前半はここに隠れて、ジローがこっちの校舎に来そうなあたりで移動するか。
いや、動かないほうが安心だな。
奥のドラムの後ろに座って隠れる。
埃っぽく重いじめっとした空気に包まれている室内。
こんなところに楽器置いて平気なのか、と思うけど置いているんだから手遅れだ。
ぼーっとグランドから聞こえる部活動をしている声や、金属の当たる音に耳を澄ませる。
今、何分くらいかな。
と、ポケットに入れていたスマホを取り出すとメッセージが来ていた。