ここ数週間で、なんだか目まぐるしく僕の世界が変化していっている。

それもこれも、席替えをしたあの日からだ。

カバンを持って教室を出る。
もう今日はこのまま帰れる。


「瑞季くん、待ってたよ」


だけど教室を出ると、廊下で待っていたらしい成田さんが仁王立ちをしている。

やっぱり。
と思い苦笑い。

放課後は毎日、と言っていいほど成田さんたちと過ごすから。


「遅い。今日は学校でかくれんぼだよ!」


横からひょいっと出てきた木下さんに驚く。


「え、何それ」
「楽しそうじゃない?」
「よくそんなことしようと思うね」
「天才でしょ」
「そうだね」


高校生になって、学校でかくれんぼをしようと思いつくなんてある意味天才だよ。


「わたし!わたしが考えたんだよ!」
「だろうね」


元気に手を上げる成田さんに相槌を打つ。

ばかと天才は紙一重、なんて言うけど成田さんは本当にその通りだ。

ばかよりの天才だと思う。

口に出して言ったらめんどくさいから言わないけど。


「おー、待たせたな。俺のために待ってくれてありがとな」
「ジローのためじゃないし」
「そうそう。普通に話してただけで、なんならジロちゃんのこと忘れてた」
「ごめん、僕もジローのこと忘れてた」
「おい!!」


大きく手を振りながらやって来たジローを3人でいじる。

泣きまねをするジローに笑わせてもらってから、場所を移動した。


「それでは今から第1回かくれんぼ大会を始めます!」


意気揚々と開会宣言をする成田さんに「ゲッ」と声が漏れた。

『第1回』て、これ続くのか……?


「ルールは普通のかくれんぼと一緒で範囲は学校内全部」
「広すぎじゃない?」
「おー、燃える」
「勝てる気しかしないわ」


僕の戸惑いをよそに、ジローと木下さんはわくわくした様子。

みんな乗り気だな。
いつものことだけど。


「時間制限は1時間ね」
「長くない?」
「何言ってんの?戦だよ。見つかった人は鬼にジュースおごりで、見つからなかった人はおごってもらう」


何でも賭けたがるな。

鬼は見つけた人数分、最高3本ジュースをゲットできる。

だとしても、隠れるほうが圧倒的に有利だな。
というか隠れるほうが楽だ。