「どこからどこまで使うの?」
「そんなに興味ある?」
「だって、こんな使い方……」
「命は命だよ。重いも軽いもない。命に優劣つけたくない」
僕の言いたいことを先読みして強い口調で言う。
わかってるよ。
それくらいわかってる。
でも、それは成田さんも同じだ。
「だとしても、成田さんが自分の命を削る必要はないんじゃないの」
「そうかもしれないね」
「優劣つけたくないって言った成田さんが、自分の命を下に見てる」
「そんなことないよ。だけど、わたしにしかできないことだから」
「それでも!自然の摂理に人間が手を出していいはずがない」
人はいずれ死ぬ。
生まれた時からそれは決まっていて、すでにカウントダウンも始まっている。
「変えてはいけないこともあるんじゃないの?」
「それでも変えたいんだよ。変えられるなら変えるべき。それが、この能力を持ったわたしの使命だと思うから」
今年で17歳だというのに、すべてを受け入れて運命に立ち向かおうとしているみたい。
いや、本来なら変えられない運命を変えている成田さんは、ひとりでずっと立ち向かってきたということだ。
成田さんの強い思いはわかった。
自分の命だ。
僕がその使い方に理解ができないとしても、とやかく言う権利などない。
ない、のだけどクラスメイトとして、こうして話すようになった仲としてはやっぱり気になる。
「その考えになったことは、さっき話してくれたことと関係してる?」
「さすが瑞季くんは察しがいいね」
立ち上がった成田さんが僕に体ごと向ける。
「そうだよ。わたしがもっと早く、この力に気づけていたらお母さんを助けられた。お父さんが壊れて自殺することもなかった」
成田さんが自分の余命をあげられると気づいたのはおばあさんに引き取られてからだ。
初めから持っていたかもしれないし、持っていなかったかもしれない。
だけど、もし、成田さんのお母さんが事故に遭った時に……と考えてしまうのだろう。
考えても仕方がない。
今なら助けられる。
死ぬことを、先延ばしにすることができるのだから。