君が僕にくれた余命363日


「元気でね」


小さくつぶやくように言った成田さんの横顔から目が離せない。

アイガモは立ち上がり、小さなアイガモたちと田んぼに入っていった。

その様子を優しい瞳で見つめる成田さんに手を伸ばす。

そこで自分の手が震えていることに気づいた。

鼓動も速くなって、このまま口から飛び出しそうだ。

成田さんの肩に手を置く。


【18.87】


朝から1年減っている。

きっと、ぜったい。
今、使ったからだ。


「どうして……」


顔を上げて僕を見る成田さん。

僕は声まで震えていた。

見え続ける成田さんの減った余命。

あと、18年しか生きられない。


「どうして、アイガモにまであげるの?」


君は知らないんだろうけど、あと18年しかないんだよ。

時間は有限。

君の命にも期限があるというのに。


「助けられる命がそこにあるから」


強い瞳。
揺るぎない意志。

成田さんは知らない人でも、動物でも、誰でも関係なく自分の命を渡すんだ。

さっきまで動かなかったアイガモが元気に田んぼを泳ぎ回っている。

視線を田んぼに移し、満足そうにアイガモたちを見つめる成田さん。

でも、僕はどうしても納得できない。


「誰にでも渡すの?」
「そうだね」


迷いなく即答。

成田さんは今までも、こうして自分の命をあげていたんだ。

命を落とした生き物に、再び生を授けてきたんだ。

減りが早いと思っていた。

命を渡さなければいけない場面なんて、そうない。

このような使い方をしているのなら、減りが早いのもうなずける。