「ここは俺が払うから」
「あ、自分のは……」
「いいんだって。瑞季もさっきは悪かったな」
財布を出そうとする僕の手を止めて、本当に全員分を払ってくれたジロー。
男前すぎるな。
「ジロちゃんありがとう」
「ごちー!」
「僕の分まで、ありがとう」
「いいってことよ。もう俺ら友達」
ニッと歯を出して笑うジロー。
心にじわっとよくわからないけど、広がる感じがした。
違和感はするけど、嫌な気分ではないから気にしないでおく。
「花純も日野も今日はありがとう」
「さんきゅーな」
「こっちこそありがとう。楽しかった」
「日野は花純のこと送ってあげなね!」
「えぇ!?」
「男ならかわいい女子をしっかり送り届けてやれよ」
驚く僕に、ニヤニヤしたふたり。
明るいのに送るのか?
でも、ここでバラバラになるのも変なのかな。
よくわかんないけど。
「わかった」
「素直じゃん」
「さすが瑞季」
「今、かわいいって認めた!?認めたよね!?」
そこかよ、と僕はため息をつくけど、ジローと木下さんは声を出して笑っていた。
この場に温かい空気が流れる。
「じゃあ、また明日」
「またなー!」
手を振り、ふたりは歩き出す。
「またね!」
成田さんも大きく手を振って見送っている。
ふたりが完全に前を向いた時に、成田さんは僕のほうへ体を向けた。
「まだ時間ある?」
「うん。というか送るよ」
「べつにいいよ。ふたりに言われたからってそこまで気をつかわなくて。らしくないじゃん」
「成田さんこそ、気をつかうなんてらしくないじゃん。送るから」
「わたしの家が知りたいんだね。それなら仕方ないなぁ」
「もうどうとでもとってくれたらいいよ」
「とりあえず遠回りして帰ろう」
何で?
と思ったけど、成田さんが歩き出したからついて行く。