「日野のジョークってわかってたよ」
「瑞季くんはもやしだし、そんなに食べられないよね」
「それは余計な一言」


成田さんは僕のことをからかい始める。

今はジローのターンじゃないのか?

あわよくば、隙を見て僕をいじろうとしてくるな。

隣の成田さんを睨むけど、ウインクをして余裕な表情。

突然のウインクに僕は驚いて顔を引いてしまった。


「瑞季が花純に誘惑されて照れてるぞ」
「かわいいじゃん」
「瑞季くんもわたしの魅力には勝てないのね」
「はぁ……注文するよ?」


テーブル横のタブレットを持ち上げて真ん中に置く。

その間もいろいろと3人に言われていたけど、すべて聞き流した。

聞き流すことは得意中の得意だ。

ぼっちを極めてきた僕に培われた最強スキル。

ドリンクバーとパフェやケーキを各々頼み注文を済ませる。

ドリンクを取りに行く間も、テーブルに戻ってからもずっと話し続けている。

3人とも口が止まらないからすごい。

学校でのこと、お互いのこと、芸能人のこと。
話がどんどん広がっていき、休まる時間がない。

パフェやケーキが運ばれてきても、会話のテンポは落ちないから圧倒される。


「あ、電話だ。ママから」
「出ていいよ」
「ごめんね」


しゃべり続けて数時間。

僕は適当に相槌を打っているだけだったけど、あっという間に過ぎていた。

木下さんのスマホが鳴ったことで、やっと静かな時間が訪れる。


「了解。ジローは今一緒にいる。わかった。じゃあ」

短い言葉でポンポン返していき、スマホを耳から外す。


「ごめん。もう夕食だから帰って来いって言われちゃった。秋山家も一緒にバーベキューするんだって」
「まじか。やったぜ!肉食える!」
「ほんとごめんね」
「ううん。じゃあ今日は解散で」


成田さんがそう言いながら立ち上がる。

それに合わせて僕たちも立ち上がり、カバンを持って会計へ。