「美玲ごめん。許して」
「あたしじゃないでしょ」
「花純、パフェ食うか?」
「許そう」
「チョロすぎ」
「チョロいくらいがちょうどいいでしょ」


そんなこと言えるの成田さんくらいだよ。

開き直ってるだけじゃんか。

まぁ、成田さんはいつものように満足気に微笑んでいるから本心なんだろうけど。


「瑞季も好きなの頼んでいいよ。お詫び」

「じゃあ、和風ハンバーグのセット、ライス大盛りでスープとドリンクバーをつけて。あ、サラダも欲しいな。デザートにフォンダンショコラと……」

「待て待て。多いだろ!」
「お詫びって言うから。これでも足りないと思うんだけど」
「俺そんなにひどかった!?」
「うん」


なんて、本当はべつに怒っていない。

だけどあまりにも、ジローの反応がおもしろいから、僕もからかってみたくなった。

僕の想像以上にジローは焦って頭を抱えている。


「日野やるじゃん」
「さすが瑞季くん。おもしろい」


女子ふたりは通常運転。
焦っているジローを見てケタケタ笑っている。


「瑞季、ごめん。まじでごめんな。お前がそんなに根に持つタイプだと思わなかった」
「は?」
「考えてみれば、瑞季って地味で暗めだから根に持ちそうだよな」
「……しばいていい?」
「いいよ!」


隣の成田さんに視線を向け尋ねると即答。

ジローの言う通りだけど、ジローに言われたくない。
と思うくらいには、僕はもうジローに素が出てしまっている。


「ほんとそういうとこ直しなさい!」
「いだっ」


だけど、僕より先にジローの隣の木下さんが手を出す。

木下さんはジローのお母さんか何かかな。


「美玲が瑞季の味方するのは俺的にキツイ」
「じゃあ、味方してもらえるような人になりなさいよ」
「なるほど。俺がんばる。瑞季の言ったやつ全部。いや、ここにあるメニュー全部買ってやるよ」
「そういう意味じゃないんだけど……」


呆れて大きなため息をこぼす木下さん。

ジローは天然なのか?

一生懸命でまっすぐなはずなのに、どうにもかみ合わない。

ある意味すごい。


「嘘だよ。僕そんなに食べられないからドリンクバーだけで」
「はぁ?嘘?」
「ジローをからかってみただけ」
「ひどいなお前。美玲と花純も、そう思うよな?」


目を大きく見開くジローに我慢できず、笑いをもらす。

言い方も手振りも洋画のコメディみたいなオーバーリアクションをするから、誰だって笑うなって言われても無理だと思う。