「わたしは楽しかったらおっけー!」
「僕も大丈夫」


正直、女子ふたりだけだと僕が振り回されることが目に見えている。
だから彼の乱入はありがたい。

女子ふたりに僕が混ざるのも何だか気が引けるというか、不思議な感じだったし。

でも、放課後を4人で過ごすなんて。
僕がその中にいるなんて。

人生何が起こるかわからない。

触れた人の余命を見れる人がいれば、触れた人に自分の余命をあげることができる人もいる。

そう考えると、人生何があってもおかしくはないな。

僕は成田さんと並んで歩きながら、彼についての説明を受ける。


「ジロちゃんは美玲の幼なじみだよ。わたしより前から美玲と一緒」
「そうなんだ」
「見てわかると思うけど、美玲のことが大好きでずっとあんな感じ」
「すごいね。木下さんが圧倒されてるじゃん」
「まぁ、ジロちゃんの気持ちもわかるけどね」
「成田さんも木下さん好きだね」
「気持ちはジロちゃんに負けないよ」
「今のは聞き捨てならないな!?」


僕と成田さんの会話が聞こえていたのか、突然振り返る木下さんの幼なじみ。

ほんと、めんどくさい人だ。

多少の言い合いを挟みながら、4人で学校からいちばん近いファミレスに入る。

冷気に包まれ気持ちよく感じ、夏の片鱗が見える。

テーブル席に案内されると、当然のように木下さんの隣に幼なじみが座った。

僕は数分前に出会ったばかりの彼と向かいになる。

だけど、彼を真っ直ぐ見ることはできないから、視線を隣の成田さんと斜め前の木下さん向きにした。


「おい、女子ばっか見てんな変態」
「僕、帰ろうかな……」


まだ座ったばかりだけど、僕は正直いつでも帰れる。
というか、いつでも帰りたい。


「帰りたいなら帰れば?」
「じゃあ……」


腰を浮かす僕のシャツの裾を隣に座る成田さんが掴む。

彼女を見ればニコニコと笑みを浮かべていた。

何でそんなに楽しそうなのか僕にはわからない。