君が僕にくれた余命363日


……めんどくさい。

これは関わりたくない類の面倒事だ。


逃げていいかな?
逃げたいな。


「おい、待てよ」


一歩後ずさる僕の次の行動が読めたのか、彼は僕の手首を掴んだ。

その時に見えた数字に驚く。

【84.10】

彼もすごく長生きをする。

101歳まで生きる。

木下さんと同じだ。
何かの運命なのかもしれない。


「何?」


彼の顔をじっと見たせいか、訝しげな表情をする。


「何でもない」
「そう。で、お前は美玲が好きなわけ?」
「は?」
「この際はっきりしろよ」


どの際だよ。
勝手に話を進めないでもらいたい。


「好きなのか?」
「好きというか……」
「は?嫌いでも許さねぇ。好きでも許さねぇけど」
「めんどくさ」


ついに本音を口にしてしまった。

好きも嫌いもだめならどう言えばいいんだよ。

それに、似たような会話、朝もしたんだけど。

木下さんと彼もよく似ている。


「めんどくさいでしょ?だから、こいつはほっといて行きましょ」
「待てよ、嫌だって」
「まぁいいじゃん。ジロちゃんも一緒で。人数多いほうが楽しいよ」
「花純、こいつを甘やかさないで」
「さすが花純!じゃあ、行くぞ」
「はぁ……」


木下さんが大きなため息をつく。

クラスではあまり見ない光景。

木下さん以上のパワーがある人なんてそうそういない。

むしろ、木下さんのパワーを吸い取っているみたいで新鮮だな。

彼は木下さんに腕を回して歩き出す。


「とりあえずファミレスにでも入ろうぜ」
「勝手に決めんな」
「ほら、美玲の分は奢るからさ」
「みんなの分も奢れ?あーもう、ほんと花純も日野もごめんね」


前を歩く木下さんが顔だけ振り返る。

その顔は少し疲れているようにも見えて、おもしろくて笑ってしまった。