「瑞季くん?」
不思議そうに僕を見つめる成田さんを見つめ返す。
「もしかして、わからない?」
「……うん」
隠しても仕方がないので、正直に頷く。
連絡先を交換したことがないから、方法なんてわかるわけがない。
それに加えて僕は機械にとことん弱い。
スマホを持っていても、機能の半分も使いこなせていないと思う。
「じゃあ教えるね。って、ロック画面初期設定のまんまじゃん!」
「仕方ないでしょ。笑わないでくれる?」
「ごめんごめん。まずここをタップして」
「タップ?」
「指で押すの。そこからですか」
「仕方ないでしょ」
クスクスと笑う成田さんに、僕はそこまでひどいのかと自覚する。
昔はこんな機械はなかったのだから、わからなくても生きていける。
そのことはすでに昔の人たちが証明している。
それでも、成田さんに笑われるのはなんだか悔しいから、今後はスマホの使い方を覚えていこう。
「次はここを押して、そのあとわたしの画面を映して」
言われるままに従う。
僕のスマホに四角の枠が出てきたから、成田さんの画面を映す。
すると一瞬で画面が変わった。
「次はそこ、押して」
「押した」
「おっけー。何か送って」
「え?何か……」
そう言われても困る。
とにかくまだ何もない画面に、文字を打った。
「あ?」
成田さんのふざけた声はケンカを売っているわけではない。
僕が送った文字を読んだだけだ。
「何かって言ったから」
「瑞季くんらしいね」
それと同時に、柴犬のイラストが送られてきた。
柴犬なのにお腹を抱えて笑っている。
なんか、ばかにされた気分。
「…………」
「それはスタンプだよ」
「へぇ……」
「これからはちゃんとスマホもチェックしてね。どうせ今まで見てなかっただろうから」
「言い方ひどいね。その通りだけど」
言い返す言葉もなく苦笑いを浮かべた時、成田さんのスマホが鳴った。
成田さんは慣れた手つきでスマホに触れて、耳にあてる。
「はい。うん。今は校門のところにいるよ。瑞季くんも一緒」
電話の向こうの声は聞こえないけど、このタイミングと内容的に木下さんだと簡単に予想がつく。
数言話した後、成田さんはスマホを耳から離す。