6限の終わりを知らせるチャイムが校内に鳴り響く。
学級委員の号令で礼をし終わったと同時に、教卓の前で大きく伸びをするひとりの生徒。
「終わったー!」
「木下、うるさいぞ」
「でももう授業終わったー!帰るー!」
「何だ?これからデートでもあるのか?」
「まぁ、そんな感じかな」
何を言ってるんだよ……。
クラスメイトが木下さんの発言に笑ったり、驚いたり、僕のように興味ない振りをしたり。
反応は様々。
木下さんは本当に目立つ。
先生にもよくからまれるし、それで木下さんも悪ノリするし。
今のも、最悪な悪ノリだ。
「お、誰とだ?」
「先生には秘密」
「みんな見たら報告な」
先生も悪ノリがひどい。
高校の先生って生徒と距離が近い人が多いよな。
うちの担任もその中のひとりで、特に木下さんは気に入られている。
というか、木下さんが誰にでもあのテンションと態度で接していることが大きいんだろう。
教卓近くの木下さんを始めとしたクラスメイトと先生が話している姿を横目に、授業中に帰る準備を済ませておいたカバンを持つ。
「瑞季くん」
「先行ってる」
成田さんに呼ばれるけど、あのあとに木下さんが来たらやばい。
僕は目立ちたくない。
クラスでも目立つ成田さんと木下さんのふたりと一緒に帰るところを見られると、周りにどう思われるか。
考えるだけで身震いしてしまう。
早く立ち去らなければ。
その一心で教室を飛び出し、早歩きで廊下を進み昇降口へ行く。
勢いそのまま靴を履き替えて、再び早歩きで校門に向かう。