不思議に思い小首を傾げた。

何だ?


「ふっ、いいよ。瑞季くんは知らないんだから」
「え?何が?」
「わたし、両親いないんだ。小さい頃に事故で亡くなって。今はおばあちゃんの家で、おばあちゃんと二人暮らし」


微笑みながら言った成田さんだけど、寂しそうに見えた。

……知らなかったとはいえ、やってしまった。

自分から質問したらこれかよ。
心底、自分に呆れてしまう。


「暗い顔しないで。だいぶ前だし今はほんと大丈夫」


そういえば、能力について教えてもらった時、父や母は出てこなかった。

ハムスターが死んで、おばあちゃんがめずらしく泣いていたって言っていた。

両親と暮らしていないから、おばあちゃんしか名前が出てこなかったんだ。

勘が鋭ければ気づけたかもしれない。

だけど僕は、何も思わなかった。
そのせいで嫌なこと思い出させて、無意味に傷つけた。


「もう~!そんなに暗い顔しないで!」
「……ごめん」
「謝るの禁止!」
「今のはあたしが悪いわ。この話の流れつくちゃった……」
「ふたりしてやめてよ。気にしないで」


笑いながら言ってくれる成田さんだけど、こういう時はだいたい笑うしかないからだ。

だからと言って、今さら言ったセリフをなかったことにできない。

フォローしようとすればするほど、ドツボにはまることもわかっている。

だけどフォローしようとするしかない。