「もう食べるよ。いただきます」
「ちゃんと手合わせて、偉いじゃん」
「瑞季くんはいつもしてるよね。わたし見てたよ」
「もういいから……」


ふたりそろうとすごいな。

ペースが完全にふたりにつかまれてしまい、僕じゃどうにもできない。

乱されまくりだ。

ここはもうのらないために、弁当を食べ始める。


「いただきます」


成田さんも木下さんも手を合わせて弁当を食べ始めた。

食べていれば少しは静かになるだろう。

なんて、少しでも期待した僕はやっぱり人のことを知らない。


「花純のおいしそう。玉子焼き綺麗に巻けてるじゃん」
「今日のは最高傑作!」
「やるじゃん。あたしも頑張ろう」
「瑞季くんのは誰が作ってるの?」
「母親」
「へぇ、そうなんだ。料理上手だね」
「そう」


上手かはわからないけど、普通においしいと思う。

それは、小さい頃からずっと食べているからで、味覚が慣れたからかもしれない。

そうだとしてもおいしいと思えるならそれがいちばんだ。


「花純はね、自分で作ってるんだよ」


何で木下さんが自慢気なんだ。

でも、自分で作っているのはすごいな。

僕はまだしようと思ったこともない。

成田さんの弁当を見れば、玉子焼きやウインナー、ポテトサラダにトマト。
色鮮やかで普通においしそうな弁当だった。


「すごいね」
「大したものじゃないから」


僕の純粋に出た言葉を謙遜で返された。

成田さんも謙遜はするらしい。


「成田さんは親に教えてもらったりしてるの?それとも本とか?」
「あ……」


僕の言葉に木下さんがハッとしたように声を漏らす。