僕が自分の能力に気づいた時から、約3年が経った。
あれからわかったことがいくつかある。
最初のコンマ前の数字は年数を表していて、コンマ後の数字は日数を表していること。
数字は絶対で、変わらない。
つまり規則的に毎日1ずつ減っていくこと。
そして、この運命を変えることはできない。
これらが、僕がわかっている自分の能力の全て。
これ以上は、知りたくもない。
知ったところで、ただ死を待つだけに変わりはないのだから。
教室に入り自分の席に座ると、影を潜める。
この能力の意味に気づいてからは、人と関わることを避けるようになった。
僕は学校で孤独だ。
でも、それがいい。それでいいんだ。
これ以上、人の余命を知りたくない。
もし仲良くなった友達の数字があと数年、数日、とかだったらつらいから。
余命を知ったところで助けられるわけじゃない。
寿命は神が決めた運命。
絶対に変わることはないし、抗うこともできない。
だから僕は、自分が傷つかないために、自分を守るために、誰とも深く関わらない。
何をするわけでもなく、今日も死の恐怖にとらわれながら時間は進んでいく。
「はい、席つけー」
チャイムと同時に入ってきた担任の声で、バラバラだったクラスメイトが席につく。
全員座ったところで、号令に合わせて挨拶をして再び座る。
「今日は席替えするか」
「よっしゃ!」
「先生ありがとう!」
席替えだけでこんなに喜ぶことができるなんて幸せだよな。
騒がしくなる教室の中、いつも僕一人だけ浮いている。
「じゃあ、四つ角の席のやつ、じゃんけんして順番決めて」
「ぜってぇ勝つ」
「勝ってね」
「ずるすんなよ」
席替えだけで、どうしてこんなに盛り上がれるんだろうか。
僕もこの能力に気づくまでは、しょうもないことでも無邪気にはしゃげていたんだろうか。
そんなような記憶もあった気はしなくもない。