君が僕にくれた余命363日



僕が自分の能力に気づいた時から、約3年が経った。

あれからわかったことがいくつかある。

最初のコンマ前の数字は年数を表していて、コンマ後の数字は日数を表していること。

数字は絶対で、変わらない。

つまり規則的に毎日1ずつ減っていくこと。


そして、この運命を変えることはできない。

これらが、僕がわかっている自分の能力の全て。

これ以上は、知りたくもない。

知ったところで、ただ死を待つだけに変わりはないのだから。




教室に入り自分の席に座ると、影を潜める。

この能力の意味に気づいてからは、人と関わることを避けるようになった。


僕は学校で孤独だ。

でも、それがいい。それでいいんだ。

これ以上、人の余命を知りたくない。

もし仲良くなった友達の数字があと数年、数日、とかだったらつらいから。

余命を知ったところで助けられるわけじゃない。

寿命は神が決めた運命。

絶対に変わることはないし、抗うこともできない。

だから僕は、自分が傷つかないために、自分を守るために、誰とも深く関わらない。

何をするわけでもなく、今日も死の恐怖にとらわれながら時間は進んでいく。


「はい、席つけー」

チャイムと同時に入ってきた担任の声で、バラバラだったクラスメイトが席につく。

全員座ったところで、号令に合わせて挨拶をして再び座る。


「今日は席替えするか」
「よっしゃ!」
「先生ありがとう!」


席替えだけでこんなに喜ぶことができるなんて幸せだよな。

騒がしくなる教室の中、いつも僕一人だけ浮いている。


「じゃあ、四つ角の席のやつ、じゃんけんして順番決めて」
「ぜってぇ勝つ」
「勝ってね」
「ずるすんなよ」


席替えだけで、どうしてこんなに盛り上がれるんだろうか。

僕もこの能力に気づくまでは、しょうもないことでも無邪気にはしゃげていたんだろうか。

そんなような記憶もあった気はしなくもない。