「花純も早く机動かして」


話が終わり机と椅子を移動させてくる木下さん。

ご飯の前にお菓子をもらったのか、机には弁当とお菓子の包装紙が置いてある。

そして口がもごもごと動いているから、もらってすぐに食べたことがうかがえた。

もらっても食後じゃないのか、というツッコミが喉まできて飲み込む。


「わたしは瑞季くんの机で食べるからいいよ」
「え、狭いから自分の机で食べてよ」
「何でここは言い返してくるの!?」
「狭いからだよ。べつに悪いこと言ってない」
「わかった。ここで食べる」
「話聞いてた?」


僕の訴えは聞いてもらえず、弁当を僕の机に置くと椅子を反転させた。

木下さんは借りた机で広々と弁当を広げている。


「そっち行きなよ」
「人を邪魔者扱いしないでよ」
「そういうんじゃなくてさ」


仲良い友達のところに行くのが普通じゃないのか?

僕がおかしいのかな。

いや、そんなわけはない。
友達のほうに行くのが自然だ。

僕と彼女はそんな間柄ではない。


「瑞季くんしつこいよ」
「しつこい男は嫌だよね」
「ほんとほんと」
「あーもう、わかったから」
「じゃあ、ここでいい?」
「いいいい!好きにして!」
「その投げやりな感じは嫌だなぁ」


めんどくさい……。
女子ってみんなこんな感じなのか?

男子ですら関わりがない僕は、女子なんて未知の生命体だ。

ため息をついて、成田さんを見るとニヤニヤ。
視線を横にずらし木下さんを見ると、同じ表情をしていた。

楽しんでる……。

軽く睨めば、ふたりは同時に笑い出す。


「ごめんごめん。瑞季くんがおもしろくて」
「日野っていい反応するね」
「でしょー?」


ふたりして盛り上がる。
けど、僕としてはあまりいい気はしない。