「美玲おはよう!あれ?瑞季くんと一緒?」
明るい声が聞こえ視線を向けると、階段を上っている成田さんと視線があった。
けど、すぐに成田さんから視線を外された。
「手!ふたり、いつのまにそんな関係に!?」
「ちょ!違うから!そんなんじゃない!!」
「は?何であんたが先に否定すんのよ」
「そんな関係じゃないからだろ」
「そうだけど、それはあたしが言うことであって、日野クンが言うことじゃないし」
理不尽だな。
誰が言ってもいいじゃないか。
「女心をわかってない」
「人の気持ちなんてわかるわけないだろ」
「うわ、日野クンってモテないでしょ」
「モテないも何も、友達もいないよ」
「ふぅん。興味ないけど」
「なんだよそれ」
自分から言ってきたくせに。
木下さんも木下さんで、つかみにくい人だ。
ペースをかき乱される。
やっぱり、成田さんと木下さんは似ている。
似てきた、のか。
そこは僕にはわからないけど、それこそ特に興味はないから置いておこう。
「ねぇ、いつまで手を繋いでるの?」
「うわっ」
「日野クンがずっと握ってくる」
「えぇ~、やっぱり瑞季くんって女子の手を握りたいんじゃん」
ふたりしてニヤニヤして僕を見てくる。
急いで手を振り払い、咳ばらいをひとつ。
「違うから」
顔を逸らすけど、視界の隅にまだふたりのニヤニヤした顔が映っている。
最悪だ。
おもしろがっている。
ひとりならともかく、ふたりになると圧倒的に不利だ。
「話は終わった?戻るよ」
「日野クンおもしろい」
「あんまりからかってあげないでね」
上からの物言いに多少むっとするけど、口には出さない。