「中学の体育祭のあとにフォークダンスがあったんだけど、その時がいちばん地獄だった。顔見知りの人の余命を順番に見ていくんだから」

「それおもしろいね」
「いや、まったくおもしろくないんだけど」
「順番にみんなの余命見てくなんてさ。それで瑞季くんはせっかく女子と手を繋げるチャンスなのに、青ざめてるんでしょ?」


青ざめてたのかな。

まぁ、気分は最悪だったから、顔に出ていたかもしれない。


「もったいないなぁ。女子に触れたいだろうに」
「僕がそういうタイプに見える?」
「むっつりなタイプでしょ?わかるよ」



……わかってない。
けど否定するのも面倒だ。

余命を見るほうが苦痛で女子に興味を持ったことはほとんどない。

この能力に気づくまでは、かわいい初恋くらいあったような気もするけど、そんな記憶だってもう思い出せない。


「君の分析の割合は半々くらいだね」
「また君って言う。花純でいいのに」
「あ、ごめん成田さん」
「もうっ!」


口を尖らせる彼女。

拗ねたらすぐその顔をする。
けど、そこまで本気じゃないことはすでにこの短い関わりの中でも知っている。


「あのさ、このことは……」
「もちろん、お互い秘密にしようね。まぁ言っても信じてもらえないだろうけど」
「そうだね」
「秘密の共有っていいね」
「そっか」
「うん。だから、瑞季くんも話してくれてありがとう!」


彼女のまぶしい笑顔に胸のあたりがズキっとした。

そんな楽しい話をしていないのに。

明言はしていないけど、僕は成田さんの余命が少ないと伝えたんだ。