「それで、そろそろ教えてよ。瑞季くんは何を隠しているの?」
僕の秘密について話が逸れていたけど、彼女は強引に戻してきた。
言わなければいけない。
彼女の運命を伝えなければいけない。
一度大きく息を吸って、ゆっくりと吐く。
そしてまた息を吸ったあとに口を開いた。
「僕は、触れた人の余命が見えるんだ」
極めて平静を装い言葉にした。
だけど、自分でもわかるほど声が震えていて、平静を装えなかったとわかる。
僕の能力を伝えることは、彼女の余命が少ないと伝えることになる。
彼女の能力で、余命が減っていると伝えることになる。
そんな残酷なこと、平静を保てるわけがない……。
「なるほど。だから気づいたんだね」
だけど、想像していたよりも彼女の声はあっけらかんとしていて、深刻には捉えていない様子。
「ってことは、やっぱりわたしの余命、減ってたんだ?」
「え?」
やっぱりって、気づいていたんじゃないのか?
「あってる?」
「う、うん」
「そっか」
どうして彼女はこの話を聞いても、何も変わらないんだ?
普通でいられるんだ。
内心はどう思っているか知らないけど、表には出ていない。
「減っていることは知らなかった?」
「うん。知らない。そうかな、とは思っていたけど」
「怖くないの?こんなこと言われてさ」
「まぁ、元々この能力を使う時に思ったことが『わたしの1年あげるから』だったし、薄々は勘付いてたよ」
「そうなんだ」
「この際だから、瑞季くんには教えてあげるね」
僕が気になったことを知ってか知らずか、彼女は両手を空へ向かって伸ばす。
体の力を抜いてから、太陽に反射してキラキラする川面を見つめ口を開いた。
「あれは、わたしが小学6年生の時かな。ハムスターを飼ってたんだけど、1年半で死んじゃったの。わたしが飼ってたハムスターの寿命はだいたい2年から2年半なのに、1年半で」
平均寿命より早く死ぬなんて悲しいよな。
人間もペットも、それは変わらない。
「おばあちゃんもめずらしく泣いてて、わたしも大号泣。人間の1年とハムスターの1年はまったく違うんだよね」
人間の1年はあっという間。
平均80年くらいで終わる人間と、2年そこらで終わるハムスターのような小動物。
どちらも同じ一生だけど、比べてしまえばあまりにも儚く感じてしまう。