「いつ?あの事故の時?」
「その時に、確信した」
「そうなんだ。やっぱり瑞季くんはすごいね」
全然すごくない。
僕の力は何の役にもたたない。
自分の命を削ってまで他人を助けることができる成田さんのほうがよっぽどすごい。
「それで、瑞季くんは何を隠しているの?」
「え?」
「瑞季くんも何かあるんでしょ?」
顔をこちらに向けてニコッと笑う。
その顔は僕が秘密にしていることがあると言いたげな表情。
彼女も確信を持っているようだった。
「人と距離をあけてるのもそのせいなんでしょ?」
勘が鋭いな。
成田さんって意外と人を見ているらしい。
「ただ、僕が人とコミュニケーションをとることが苦手なだけだよ」
「それは関わってみたらわかる。瑞季くんはあえて、周りと距離を置いているよ」
「その心は?」
「だって、一緒にいると楽しいから。たくさんの友達に囲まれているタイプだよ」
「僕のこと買いかぶりすぎ」
この能力に気づくまでは、自ら他人と距離をとろうとは考えていなかった。
その時もべつに友達が特別多いわけではない。
だから、成田さんは人をよく見ているけどはずれる時もあるようだ。
「少なくとも、わたしは瑞季くんといると楽しいよ。いつも影を薄めている瑞季くんのことがずっと気になってて、話してみたらこんなにも楽しい人だった」
「変わってるね」
「あと、すごいシンパシー感じたんだ」
「シンパシー?」
「握手した時かな。ビビッときた。この人はわたしと似ているって」
やっぱり彼女は勘が鋭いらしい。
いや、直感だけで生きていると言ったほうが正しいのかもしれない。
じゃないと、シンパシーなんて感じない。
あの時、僕はそんなの感じなかったんだから。