「成田さんは……他人に自分の余命を渡すことができる人って、いると思う?」
本当は僕の勘違いならいいと、今でも思っている。
そんなことできる人はいないほうがいいと思っている。
神が決めた運命に従って、人生を全うするほうがいい。
だって、そうでなければ……ひとりの女子高生が背負うには、あまりにも重すぎるじゃないか。
「……瑞季くんは知ってるの?」
お互いにしっかりと答えない。
質問を質問で返してばかり。
僕を見る成田さんの瞳は揺れているように見えた。
「わたしが、触れた人に命をあげられること」
ドクン、と大きく心臓が音を立てた。
それから息が詰まりそうなほど加速していく。
「なんか最近、瑞季くんがわたしと話したそうにしているなって思ってたけど、この能力について知ってたからなんだね」
「……うん」
「普通、こんな能力があるなんて気づかないと思うんだけどな。実際、気づいた時に周りの人に言っても信じてもらえなかったし」
笑い交じりに言いながら、斜面に腰を下ろす。
僕もその隣に移動して腰を下ろした。