「わたしの食べる姿がハムスターみたいでかわいくて見惚れてた?」
ニヤニヤしている成田さんはめずらしく大外れだ。
「逆」
「逆?」
「肉食獣みたいだなって。クレープというかわいらしいスイーツをこんなに豪快に食べれる人がいるのかと……」
「おい!それは乙女に対してひどいんじゃないの!?」
「驚いただけだよ。乙女の食べ方すごいなって」
「ばかにしてる!」
顔を真っ赤にさせる成田さんはもしかしたら恥ずかしがっているのかもしれない。
そういえば見られるだけで照れるくらいだ。
案外照れやすいタイプなのかもしれない。意外だ。
「もう、知らない。瑞季くんっていじわる……」
めんどくさく拗ね始める成田さんに、今度は僕の頬が緩む。
なんだか、こんな成田さんの表情を見て勝った気になったのだ。
そのまま僕はジェラートを食べきり、彼女は豪快な食べ方とは打って変わりチビチビと食べ進めた。
「はぁ……瑞季くんが肉食獣とか言うから、意識しちゃったじゃん。けっこうショック」
「ごめんごめん。でも、途中からはヒグマみたいだったよ」
「それも肉食じゃない!?」
成田さんはすぐにツッコんでくれる。
話をよく聞いていて、テンポよく返してくれる。
だから成田さんは、誰とでも仲が良いんだろうな。
そして僕みたいな友達のいない暗い人とも一緒にいられる。
成田さんについて軽く分析していると、彼女は勢いよくベンチから立ち上がった。
「さ、次行こう」
「次はどこに?」
「まぁ、ついて来てよ」
クレープのごみを近くのごみ箱に入れると、エスカレーターに向かって歩き出す。
僕も残った紙とプラスチックのスプーンをごみ箱に入れ、成田さんのあとに続く。
目的がわからないままショッピングモールを出て、寂れた商店街をどんどん進む。
他愛ない話を成田さんが一方的にしながら歩き続け、着いた場所は公園。
だけど公園には入らずにまっすぐ進むと、長めの階段がある。
「堤防?」
「そう。青春でしょ?」
「青春なの?」
「田舎の高校生は、堤防で青春するんだよ」
それは偏見じゃないのか。
そう思うけど、まぁいいや。
成田さんはきっとそうなんだから。
「男女ふたりで堤防って青春じゃん」
「へぇ」
「もっと人生楽しもうよ!一度きりなんだよ!」
「そうだね」
「反応うっす。今生きてることが当たり前だと思ってない?」
……そんなこと、思っているわけがない。
僕は常に死を感じている。
誰よりも死に対して強く意識している。
「当たり前なわけない」
僕は知っている。
他の人よりも身近にある。
「人は死ぬよ」