適当に走っていたら「残念、こっちです~!」と僕が通り過ぎたあとに、道を曲がる彼女に何度か腹を立てながらも、地元民のたまり場であるショッピングモールに着いた。


「はぁはぁ……瑞季くんってけっこう、足速いんだね」
「君もなかなかやるね……はぁ、」


息を切らしながらショッピングモールに入ると、涼しい空気に包まれる。

走ったせいで無駄にかいた汗が、ゆっくりと引いていく。


「とりあえず飲み物買っていい?」
「わたしも買う」


まずはショッピングモール内のスーパーで飲み物を購入。

喉がカラカラだから買ったばかりのミネラルウォーターをすぐに開けて飲む。

体育でもこんなに思いきり走ったりしない。

明日は筋肉痛になるかもしれないな。

次の日のことを想像し憂鬱になる僕とは裏腹に、カルピスを飲みながら笑顔の成田さん。


「あー、楽しかった。次はゲーセンね」
「えっ」
「ほら、行くよ」


休む暇はほんの一瞬しか与えてくれないようで、成田さんはそそくさとエスカレーターで上の階へ行く。

僕も急いで後ろについて行き、目的のゲーム機がたくさん置いてあるコーナーに入る。

壁に囲まれていないため開放感があるからまだいいけど、あまりこういうところは得意ではない。

音がごちゃごちゃしていて、頭にガンガン響くから。


「瑞季くん、こっちこっち」


成田さんは僕の心境なんて知らず、奥から僕を振り返って大きく手を振る。

小さくため息をついて、体の力を抜いてから成田さんの前まで行く。


「今日はこれで遊びます」


その言葉と同時にポケットから取り出した丸い銀色の物を見せる。

普段遊ばない僕はそれがお金ではなく、メダルゲームのメダルだということに気づくのに数秒かかった。


「……1枚しかないけど」
「まぁ見ててよ」


成田さんがニヤッと片方だけ口角を上げた。

そして、近くの金魚すくいのゲームにコインを入れる。

順番に泳いでくる金魚の上にそれぞれ違う数字が見える。


え?僕、ゲーム内の金魚の数字も見えるのか?


混乱しているうちに、成田さんは“10”と書かれたごつめの金魚をゲットした。

その瞬間に金属が連続で落ちる高い音が連続で響く。


「はい、10枚になったよ」
「え?」
「1枚が10枚に増えたでしょ?」
「そ、うだね……」


あっという間に10倍になったメダルに驚く。

両手にそれを持った彼女は今日いちばんの笑顔を見せる。

金魚の上にある数字は、獲得できるメダルの枚数だったのか。

自分の能力のせいで、数字がすべて余命に見えていた。


そんな自分の思考回路に、少しうんざりした……。