「それで、違うなら何でそんな難しい顔してたの?」
「それは……」
成田さんに聞かないとわからない。
だけどいきなり「他人に余命をあげてるの?」なんて聞けるわけがない。
それが当たっていたら、大丈夫だろう。
でも、僕の勘違いだとしたらすごく頭のおかしいやつみたいだ。
何、マンガや小説みたいなこと言ってるんだってなる。
成田さんをじっと見て考える。
大きな黒い瞳が僕をとらえたけど、少しして伏せられた。
「何でそんなに見るの。……照れるじゃん」
横の髪をつかんで顔の前に持ってくる。
本当に照れているのか、顔を隠す。
そこまではわかるけど、髪の毛で隠すなんて。
成田さんは僕の予想できない行動をする。
「ごめん」
「思ってないでしょ」
「だって、照れるなんて思わないじゃん」
「瑞季くんね、けっこうかわいい顔してるんだよ?そんな顔にじっと見つめられたら女子はみんな照れるよ」
「よくわからないけど」
「自覚ないことは知ってるよ」
ふいっと顔を逸らされてしまった。
成田さんのことはよくわからない。
こんな僕に話しかけてくれる時点で、変わった人なんだとは思うけど。
それから成田さんと話しているうちにホームルームの時間になり、会話は強制終了。
今回の会話だけじゃ、有益な情報を得ることはできなかった。