……何が起こった?

即死だったんじゃないのか?

心臓マッサージをして、心臓が動き出すのか?

奇跡が起きたんだろうか。

でも、たしかに彼に触れた時に見えた数字は【0】だった。

今、死ぬんじゃないのか。

まだ今日が終わるまでに猶予はある。

けど、何かがおかしい。

胸がざわついている。

男性がストレッチャーに乗せられ、救急車に向かっていく。

野次馬たちが下がって道をあける中、僕は無意識に飛び出していた。


「ちょっと君!」


止められるけど、確認せずにはいられなかった。

男性の顔は心なしか、さっき会った時より血色がよくなっているように見える。

意味がわからない。

過労でふらふらだったのに、何で顔色がよくなってるんだよ。

いつもなら自分から誰かに触れることは躊躇するけど、今はすんなり手が伸びて男性に触れていた。

その瞬間、目を開けた男性と視線が交差する。



【1.0】



見えた数字に驚いて目を見開いた。

この男性の余命はたしかに【0】だった。

彼は今日、死ぬ運命だった。

それなのに、余命が1年増えている。

増える人なんて見たことがない。

抗えない運命のはずなのに。


一体、どうなっているんだ……?