成田さんの余命が1年減っていると気づいた日から3日経った。
さり気なく触れて、というよりは成田さんが僕に触れようとする行為をかわさずに、触れてもらっているというほうが正しい。
成田さんはスキンシップが多いから、僕が拒否しなければ触れることは容易いとわかった。
この3日間、成田さんに接触したけど、余命はしっかり1日ずつ減っている。
おかしいな。
じゃあ、あの時減った1年は何だったんだろう?
たまたま?
いや、神が決めた運命にたまたまなんてないはずだ。
だとしたら彼女は特別なのか。
まだわからない。
「瑞季くん、グミいる?」
「いらない」
「えー、おいしいのに」
「成田さんはいつも何か食べてるね」
「お腹空くじゃん」
そのわりには細いな。
と、彼女のシルエットを目で追う。
「あ、今どこ見た?変態」
「そう言われるようなところは見てない」
「ってことは、やっぱり見たんじゃん!」
「否定しなかっただろ」
「開き直るのもどうなの!?」
机をバンッと叩き、唇を尖らせる成田さん。
いつも、反応がわざとらしいけど、それが彼女のおもしろさなんだろう。
僕はツッコまないけど。
「最近、瑞季くんって言うようになったね」
「べつに変わってない。前と同じ」
「いやいや、変わったよ。わたしに心開いてる」
「じゃあそういうことでいいよ」
「うん。そういうことにさせてもらうよ」
実際、僕が彼女に心を開いているかと言うと、そういうつもりはない。
だけど前より話すようになった。
それは、彼女の余命が不自然に減ったことが気になるから確認するため。
それ以上でもそれ以下でもない。
たしかめるためには、距離をとっていてはできない。
ある程度、近い距離にならなくてはいけないから。
だから、成田さんと話すんだ。
満足そうに笑う彼女を見て、少しだけ胸がざわついた。