「ふっ、そんな動揺しなくてもいいのに」
おかしそうに笑う彼女に、ますます動揺する。
もし明日また、変わっていたら?
そのためにも今、触れないと……!
「もう、仕方ないなぁ」
成田さんが何か言いながら、カバンをゴソゴソとあさっている。
けど、僕は成田さんのよくわからない言動に疑問をもつ余裕もない。
触れたい。たしかめたい。
もういっそ、強引に彼女に飛び込むか?
なんて、思考が回らなくなり、頭の悪い考えまで浮かぶ。
勇気出せ。たしかめてから、たくさん悩もう。
よし。
と心の中で気合いを入れた時。
「はい、どうぞ。これ食べて落ち着いて」
成田さんが僕の手首をつかんで、無理やり前に出させその手に自分の手を重ねた。
驚きのあまり言葉も出ず、ただ目の前の彼女を見つめる。
「あ、溶けてたらごめんね?」
「いや……」
「また明日!」
僕の手を丸めて手の中のものを握らせてから、笑顔で手を離す。
その手を大きく振って友達の元へ行ってしまった。
丸められた手を開けば、いちごのイラストが描いてあるひねり包装の飴。
僕はすぐにそれの端っこを引っ張る。
包装紙にくっついている飴。
ほんとだ。溶けてる。
見た目でもわかるそれを口に入れると、溶けて柔らかくなった触感といちごミルクの甘味が広がる。
……見間違いではなかった。
成田さんの余命は僕が初めて見た時から1年減っていた。
やっぱりそうだった、と思う気持ち半分。
どうして1年減ったのか、という疑問半分。
少しして、疑問が僕の思考すべてを支配する。
こんなのは初めてのことで、考えても考えても答えなんてわからなかった。