……やっぱり見間違いだ。
僕は疲れているんだ。
人と関わりを絶ってからもう3年。
特定の人と深く関わっていなかったのに、成田花純という人物の登場でイレギュラーばかり。
疲れて見間違えてもおかしくはない。
今まで、見間違えたことはないけど、きっとそうだ。
何度も深く息を吸い、ゆっくりと吐く。
それを繰り返し、慌てている心臓の音を落ち着かせた。
「プリント、ありがとう!」
「う、うん」
手渡ししようとするから、ゆっくりと手を伸ばす。
その時に、さり気なく成田さんに触れて、さっきのは見間違いだと確認しよう。
大丈夫。
そんなことがあるわけないんだから。
あえて成田さんが持っている付近に手を伸ばし受け取ろうとした時。
「花純、先生が呼んでるよ」
「げっ」
「こら成田。“げっ”とはなんだ?」
「ごめん、瑞季くんありがとね!先生、今行くんでお手柔らかに~!」
成田さんは謝りながら、手渡ししようとしたプリントを机に叩くように置いて、急いでドアのほうへ行ってしまった。
……はぁ。
息が詰まりそうだった。
結局、触れることはできなかったから確認できていない。
触れることが怖い。
でも僕は、確認しなくてはいけない。
この能力を持って生まれたからには、能力のことを知る責任がある。
もしかしたら、僕の余命を見る能力になんらかの変化が起きているのかもしれない。
どんな変化でもいい。
今まで絶対だったことが崩れた。
それだけで大きなことだ。
だから僕は、たしかめたい。