心臓がドクドクと大きく音を立てている。

彼女から目を離すことができない。

そんなわけ……。



「瑞季くん?」


頭をさすりながら僕を不思議そうに見ている彼女を、驚いたように見つめ返すことしかできない。

そんなことがあるはずがない。


一瞬だったから見間違えた?

いや、一瞬でも見間違えるわけがない。

数字は触れている間しか見えないけど、一瞬でもたしかに見える。

見えると言っても、脳内にはっきりと浮かび上がってくる感覚に近い。

だから見間違えることはない、と言い切れる。


だとしたら、今のは……。



「どうしたの?」
「……何でもない」


必死に平静を保って言ったけど、まだ不整脈は直らない。

さっき成田さんとぶつかった時に見えた数字。


【21.99】


席替えをした日に握手をした時は、たしかに余命はあと22年だった。

日数は毎日に1ずつ減っているけど、年数は1でも減ることはない。

だって、寿命は神が決めた運命だから。

これは絶対に変わらない。

僕は知っている。

どうあがいても、伸ばすことはできない。

反対に、短くすることもできない。

それなのに、余命が、神が決めた運命が変わっているなんて……。


考えてもわからない。

こんなこと、初めてだ。

数字の意味がわかっていない時に両親やクラスメイトや先生、たくさんの人に毎日触れてきたけど、一度も年数が減ることはなかった。


必ず日数が1ずつ減るだけ。

ありえない。


ありえない、はずだった。