成田さんのお通夜に松葉杖をつきながら行く。
死ぬはずだったんだ。
たしかにこの怪我だけで済んだのは奇跡だよ。
本当なら今日あそこで眠っていたのは僕だったのに。
お通夜にはクラスメイト、先生などたくさんの人が集まっていた。
みんな泣いている。
成田さんの死を悲しんでいる。
僕は抜け殻になったみたいに呆然としていた。
「日野……っ」
声をかけられて振り返る。
そこには目をパンパンに腫らせている木下さんがいた。
「肩貸す?」
「……大丈夫」
3人集まっても重い空気は変わらない。
ここに成田さんがいない。
それが苦しくて胸が張り裂けそうで、呼吸をするだけでやっと。
何も話すことはできずに椅子に座り、お通夜が始まるのを待った。
お経をあげている時も線香をあげる時も、すすり泣く声や嗚咽がずっと聞こえている。
成田さんが愛されていた証拠だ。
僕はもう自分が自分ではないみたいで、ただ時間が過ぎていくのだけを感じた。
眠っている成田さんはあまりにも綺麗で穏やかで、見た瞬間に僕はあふれるものを抑えきれずにここでも泣き崩れた。
そのあとはどうしたのかわからない。
ただ心にぽっかりと穴が開いた。
僕の心は成田さんで埋まっていたのだと気づく。