「嘘……」
『こんな嘘つかねぇよ……』
ジローの声も震えている。
電話口の向こうでは嗚咽がずっと聞こえている。
「い、いつ……?」
『今日。眠ったまま起きなかった。原因は不明だって』
淡々と、泣くのを堪えるような声で僕に情報を伝える。
今日?
だって成田さんはあと1年余命があるはず。
昨日、1年と1日だったんだから、今日は……。
「っ、」
『明日、通夜が18時からある。じゃあ』
ジローはそれだけ言って通話を切った。
僕はそのまま動けない。
力がなくなりスマホが手から滑り落ちる。
でも、そんなこと気にしてもいられない。
嘘だ。
そんな……。
成田さんはまだ生きるはずなのに。
今日さえ乗り越えれば、誰にも余命を渡せなくなる。
だから、そのあとは僕が変えてやるって……。
「……僕、か………」
ぽつりとつぶやいたと同時に、瞳から涙があふれた。
「~~~~~~~っ!!!」
それはもう止められなくて、声にならない声で叫ぶように泣いた。
僕だ。僕のせいだ。
成田さんは生きられるはずだった。
成田さんにもう余命を渡さないでって約束した。
これからも一緒にいるために。
それなのに、成田さんは死んだ。
きっと僕が昨日、死ぬ運命だったんだ。
男の子を突き飛ばした時、余命は【0】ではなかった。
僕が昨日【0】だったんだ。
本当なら僕が死ぬはずだったのに……。
僕の声に両親が部屋に入って来たけど、そんなことは関係なしに泣き崩れた。
僕は最後に、守りたかった人から守られ、終わらせてしまった。
その現実に耐えられず、喉が潰れるほど泣いた。
彼女はもう、この世界にはいない。