君が僕にくれた余命363日



ゆっくりと目を開ける。

眩しい光にすぐ開けた目を細めた。

そして少し慣らしてから再び目を開ける。


「瑞季!?」
「瑞季、わかる!?」


お父さんとお母さんの顔が映りこんできた。
ここはどこだろうか。


「先生呼びましょう」
「よかった。瑞季、本当によかった」


お母さんが何かを押す。
だんだんとはっきりとしてきた意識で、この鼻につく匂いや天井で病院だと気づいた。


「瑞季覚えてるか?お前、子どもをかばって自分が鉄骨の下敷きになったんだよ」
「意識不明の重体だったのよ」


そうだったのか。

そういえば、鉄骨が落ちてきて子どもを突き飛ばしたところまでは記憶にある。

そのあとは何も……。


「丸1日寝てたんだから」
「い……ゴホッ……」
「あ、水飲む?」


言葉を発そうとしたけど、上手く声が出なかった。
お母さんに支えられながら体をゆっくり起こす。

正直、痛みはある。
でも思ったよりも大丈夫そう。

水を一口潤す程度に、と思ったけど喉が渇いていたみたいでいっきに飲んだ。


「今、何時?」
「もう夜だよ。明日には退院できるかな」


お母さんの言葉通り、お医者さんが診に来て明日には退院となった。

でも当分、通院はしなくてはいけない。

それほど僕は重体だったようで、生きていることが奇跡らしい。


「あ、そういえばかわいい女の子がね……」

お母さんが何か言っている。

でも僕はまだ万全ではなく意識が朦朧としてくる。
いろいろ考えたいことがあったはずだけど、まだ体がだるかったこともあり抗わずにそのまま眠りについた。