君が僕にくれた余命363日



「瑞季くん、どっか旅行行こうよ」
「どっかって?」
「海外!はさすがに高校生のお小遣いじゃ無理だよね」
「日本語も上手に話せないのに無謀でしょ」
「怒るよ!!」


顔を見なくてもわかる。

成田さんはきっといつものようにわざとらしく頬を膨らませて拗ねている。

少し後ろを歩く成田さんを振り返れば、予想通りの表情をしていた。

ほんと、わかりやすい。

クスっと笑いをこぼすと成田さんは唇まで尖らせた。

この表情を何度見ただろうか。
何度見ても、笑ってしまう。


「その顔いいね」
「怒ってるの!」
「そうなんだ」
「もう!」


成田さんが僕の前に回り込む。

余命があと1年しかないとは思えない。

このままずっと笑っていてほしい。

きっと変えるから。


「で、旅行だっけ?」
「うん。まぁ、現実的に考えて日帰りかな」
「いいよ」
「やったね」


どこに行きたいかとか話しながら成田さんの家に向かって歩く。

もう慣れた道。
何度もここを成田さんと歩いた。


「やっぱ都会行きたいな。買い物したいし、おしゃれなカフェにも行きたい」
「したいことたくさんだね」
「うん!美玲もジロちゃんも一緒だともっと楽しいよ」


成田さんは笑顔で頷く。

ほんと人生楽しんでいる。

そんな成田さんを見ると、僕も少しだけ楽しい気持ちになる。

これもぜったいに、本人には言わないけど。


「送ってくれてありがとう」
「うん」
「計画立てとくからね」
「わかった。じゃあね」
「また明日」