「うっ……ぅ……」
「それでも、瑞季くんは変えることができたんだよ」


成田さんが僕の頭に手を伸ばし、優しく撫でてくれる。

結局は成田さんに助けられていた。

成田さんが気づかれないように、余命を見られないようにしていたのは僕のせいだ。

僕が運命を変えたと思って喜んでいたから。

だから成田さんの優しさで、そのしわ寄せで別の人が【0】になったことを教えないため隠していた。

僕は、いちばん守りたかったものを守ることができていなかったんだ。


「くっ……う……っ」
「泣かないでよ。瑞季くんはすごいんだから……ふ、ぅ……」


僕を慰めていた成田さんも言葉を詰まらせる。

苦しくて、胸が痛くて、息ができない。
やっぱり運命に抗うべきではなかったんだ。

変えることなんてできないと知っていたのに、できる気になってしまった。

そのせいで成田さんは……。


「……僕のせいだ。何をしても意味ないのに……」
「ばか!」
「……え」


僕の呟きに大きな声でそう言うと、濡れた頬を両手で挟んで無理やり顔を上げさせられた。

大粒の雫をこぼす彼女が歪んだ視界に映る。


「瑞季くんはすごいの。瑞季くんのせいなんかじゃない。意味ないなんて言わないでよ……」


だんだんと弱々しくなり、嗚咽をもらす彼女。

自分だってここまでひとりで抱えて苦しかったくせに、僕を慰めようとする。

……情けない。

ヒーロー気取りで浮かれていた自分が情けない。

守った気でいた自分にむかつく。