浮かれてヒーロー気分になっていた自分に心底嫌気が差す。

何が成田さんを守るため、だ。

変わってないじゃないか。
変えられなかったんじゃないか。


「大型トラックが突っ込んできたあの事件の日、死人が出たんだね」


成田さんは俯いたままだけど、少し肩に力が入ったのがわかった。
それを肯定と受け取る。

あれだけ建物や車がぶつかって、大型トラックが横転したりナイフを持って暴れたりしていたんだ。

警官も言っていた。
『被害が大きい』『重傷者多数です』と。

どうして気づけなかったんだ。

僕はあの時、感じていたじゃないか。

周りにももしかしたら【0】の人がいるかもしれないって。

それでも、見たわけではないから確実に見てしまった小学生を助けようとしたんだろ。

結果がこれかよ。


「……変えられてなかったんじゃないか」


成田さんの肩に置いた手に力が入る。

胸が張り裂けそうなほどに苦しい。

歪んでいた視界は瞬きをすると同時に、あふれて少しクリアになるけどすぐにまた歪んでいく。

一度あふれたものは止まらず、ぼたぼたと落ちていった。


「……ううん、瑞季くんは変えたんだよ」
「変わってない……これが、証拠じゃないか……」
「小学生の子は、守られたんだよ」
「でも、その代わりに違う人が犠牲になった……」


だから成田さんが余命を渡すことになったんだ。

運命を変えても、違う人にその運命がいってしまったら意味がない。

やっぱり神が決めた運命には、抗っても無駄だったんだ。