君が僕にくれた余命363日


何も言わない彼女にゆっくり手を伸ばす。

心臓は破裂しそうなくらいうるさくて、自分の心音しか聞こえない。

手は過去いちばん震えていた。

避けようとしない彼女は覚悟を決めたかのように瞼を閉じた。

それと同時に、一粒の雫が彼女のスカートに染みを作る。


「っ、んで……」


声が詰まった。

瞬きも忘れ、彼女の横顔を見つめる。


【1.14】


余命があと1年と14日しかなかった。

成田さんに最後に触れたのはいつだっけ?

あの事件の時はたしか13年だったはず。

それがあと、1年だなんて……。

瞬きを忘れた瞳が、鼻の奥がツーンとすると同時に歪んでいく。


「い、いつ?」
「…………」
「誰に……?」
「…………」


成田さんは僕の質問にはいっさい答えない。

どうしてこうなった。
成田さんの12年はどこにいったんだよ。


「ねぇ、成田さん。答えてよ」


彼女の両肩に手を置き、顔を僕に向けさせる。

だけど、俯いて顔を見せてはくれない。

どんな表情をしているのかわからない。

わからないけど、俯き垂れた髪の隙間から雫がポタポタと落ちていくのが見えた。

スカートは色が濃くなってきている。


「何で……っ」


そこで気がついた。

僕が最後に触れたのは、やっぱりあの事件の日。
その日以来、成田さんは僕に触れないようにしていた。

……そういうことか。