考えれば考えるほど、そうとしか思えなくなってくるから、早く成田さんに笑い飛ばしてもらいたい。

『心配しすぎだよ』ってケタケタ笑って僕をからかってほしい。

成田さんと縦に並んで、何も話さずに歩く。

着いたところは成田さんと秘密を共有した場所。
ここでの過ごし方を僕は成田さんに教えてもらった。

「青春、しようよ」

らしくない僕のセリフに、成田さんは俯き加減だった顔を上げた。

大きな瞳は潤んでいて、今にも零れ落ちそう。

僕が腰を下ろすと、少し距離をあけて隣に座る。

そのことが何を意味しているのか、もうわかっている。

風が僕たちの間を吹き抜けていくけど、重苦しい空気は残ったまま。



「…………触っていい?」


長い沈黙のあと、ぽつりと呟くように発した声は情けないほど弱々しい。

いつもなら『変態』とかなんとか言って茶化して思いきり笑い飛ばしてくれそうなものだけど、成田さんは下唇をぐっと噛んで何かを堪えていた。

けっこうわかりやすい彼女に、心臓を鷲掴みされたかのように苦しくなる。

彼女に触れるのが怖い。

学校の廊下ですれ違いにぶつかるより、満員電車でぎゅうぎゅうになっていろんな人に触れるより、フォークダンスで順番に女子の手を握ることよりも、

成田花純に触れることが怖い。