「花純、日野。行こう」


放課後になり木下さんが僕たちに声をかけながらやって来る。

成田さんが木下さんを見て口を開こうとするけど、それより先に僕が言葉を声にのせた。


「ごめん、木下さん。今日は成田さんとふたりで帰らせて」
「はぇ?」


僕の突然のセリフに木下さんは変な声を出して、顔まで間抜け面になった。


「木下さんはジローとふたりでね」
「……何で!?ジローとふたりの時間いらないから。あたしはいつも通りで……」
「じゃあ、また明日。行こう、成田さん」

ジロー不憫だな。
と可哀想に思いつつ、そこを深掘りすることはしない。


「あ、うん。美玲ごめんね」


カバンを持って歩きだす僕と、木下さんに謝ってから僕の後ろをついてくる成田さん。

ついて来てくれたことに少しホッとした。

僕と距離を置こうとしているから、あのまま木下さんと話し込む可能性だってあった。

安堵して息を吐く。

そして、クラスメイトと「また」なんて言葉を交わしながら教室を出る。

そのまま昇降口へ行き靴を履き替えてすぐにまた歩き出す。

成田さんは何も言わずについて来てくれた。

これまでなら「待ってよ」とか言いながら突進でもしてきそうものだけど、今はしない。

僕と競うこともなければ、駆け引きを持ちかけたりもしない。


どんどん嫌な予感が当たる気がしてくる。
今までもこの嫌な予感は当たっていた。

でも、今僕の予感は本当に最悪なもので、絶対に外れてほしいもの。