「成田さんで」
「仕方ない。今はそれでいいよ」


これからもそれでいくよ。
とは、声に出しては言わない。


「それで、どうしたの?」
「成田さんは、何で僕にこんなに話しかけてくるの?」
「席が近いから」
「それだけ?」
「話したことないから話してみたかったの。あと、誰もあまり話したことがない瑞季くんと仲良しって特別じゃない?」
「何それ」


僕が成田さんとだけ仲が良いイコール特別になるのか。

そんな特別いらないだろ。

その前に僕と話しても楽しくないから誰も話さないだけで、僕と成田さんが仲良くなったところで羨ましがる人なんていない。

むしろ、クラスでもそれなりに目立って明るい成田さんに話しかけられる僕のほうが羨ましがられる可能性は高い。

そうなると困るな。

面倒事は起こしたくない。

僕はこれからも目立たず地味で暗い、ぼっち生活でいい。



「瑞季くんってわざとクラスメイトと距離をとろうとしてるでしょ?だから、距離を詰めてみようかと」
「僕の意図がわかってるなら、そっとしておいてくれたら優しいのに」
「ちょっとそれ、わたしに優しくないって言ってる?」
「好きに解釈してもらっていいよ」
「んー、瑞季くんって優しくない」


拗ねた表情をする彼女を一瞥し、椅子から立ち上がる。