「頑張ったね」

と、先ほど僕がされたみたいにこの子たちの頭を撫でる。

全員【0】や【1】など残りわずかではなく、何十年もの余命があった。

やっと心の底から安心することができた。

変えられた。

その事実が嬉しくて胸が高鳴る。
体の痛みも疲れも吹っ飛ぶくらい、興奮していた。

この大騒動に小学校の先生が駆けつけ、小学生の子たちは保護をされる。

小学生の子たちとは手を振り別れ、僕はまだ姿が見えない成田さんを探す。

成田さんには大型トラックの運転をしていた男性の子どもを預けた。

どうなったのだろうか。

ここで食い止めたから助かったとは思うけど。
キョロキョロとあたりを見回す。


「瑞季くん!」


雑音の中、彼女の声だけを鮮明に聞き分けることができた。

すぐに声の聞こえたほうを向く。


「成田さん、あの子は?」
「お母さんが迎えに来たよ。あの両親、離婚裁判中でもめてたみたい」
「そうなんだ」


だとしても、こんな大きな事件を起こすなんて、どれだけ泥沼になっているんだ。

子どもを巻き込んで……。

正直、家族のことは家庭内で収めてほしい。
くわしい事情は知らないけど、お父さんのほうは正常な判断ができなくなるほど追い詰められていた。

嫌なことも苦しいこともたくさんあったんだろう。

だからといって、関係ない人たちを巻き込むのはどうかしている。

どんな理由があるにしても間違っている。


「心配してそうだから言うけど、お母さんは大丈夫そうだったよ。すごく焦って子どもの名前を叫んで、見つけると泣きながら抱き締めてた」
「そっか」
「お母さんにたくさんの愛情もらってるよ」
「うん」


お父さんに殺意を向けられた子どもは、これからどう育っていくのだろうか。

トラウマとなってずっと苦しむのは嫌だな。
そう思ったけど、成田さんの言葉を聞いて少しだけ安心した。

これからも子どもは元気よく、明るい未来に向かって行ってほしい。


「瑞季くんは大丈夫だったの?」
「なんとか」
「まぁ、見てたけどね。カバンで思いきり殴るところ」
「その通りだけど、改めて言葉にされるとやばいね」
「びっくりした。今回のこと全部。瑞季くん、すごく頑張ってた」


成田さんがにこっと笑顔を浮かべる。
すごく嬉しそうにしてくれる成田さんに、僕も口角を上げた。