君が僕にくれた余命363日


「……見つけた」


男性が男の子を見た。
ドキッとした。


「こっち」
「待って。でもパパが……」
「気持ちはわかるけど、落ち着いてから話したほうがいい」
「やだ。パパがっ……」
「……お前さえいなければ」


フラフラした足取りだった男性は何かを呟いてから、焦点が合わなかった目を合わせる。

やっとパトカーや救急車のサイレンの音が聞こえてきた。

あと少し。
男の子の肩に手を置き触れてもまだ【0】のまま。

ここを乗り切れば、変わるかもしれない。

ここで変えるしかない。

意志を固め、泣き出す男の子を抱える。


「そいつは俺の息子だ。下ろせ」
「無理です」
「家族の問題に入ってくんな」
「もう十分みんなを巻き込んでいる」
「ふざけんな!そいつがいなければ全部解決するんだ」


もう自分もボロボロなのに走って距離を詰めてきた。

男の子は向けられた殺意に、震えている。

早く警察来てくれよ。
この場を収めてくれよ。

誰か……じゃない。

僕が助けるんだろ。

あの男性、この子のお父さんを止めればいいんだ。


「成田さん、お願い。その子を連れてできるだけ遠くへ」
「瑞季くんは!?」
「僕は大丈夫」
「でも……」
「早く!!」
「う、うん」


成田さんは震える男の子を抱き締めて走った。

僕はその場に残り、男性を迎え撃つ。

自分の余命は見えない。
僕は今日ここで死ぬ運命なのかもしれない。

もしそうだとしても、小学生の子たちが生きることができたならば僕の勝ちだ。


「どけ」
「どかない!」


血のついたナイフがキラッと光る。
怖いけど、それ以上に怖いものがある。