「……見つけた」
男性が男の子を見た。
ドキッとした。
「こっち」
「待って。でもパパが……」
「気持ちはわかるけど、落ち着いてから話したほうがいい」
「やだ。パパがっ……」
「……お前さえいなければ」
フラフラした足取りだった男性は何かを呟いてから、焦点が合わなかった目を合わせる。
やっとパトカーや救急車のサイレンの音が聞こえてきた。
あと少し。
男の子の肩に手を置き触れてもまだ【0】のまま。
ここを乗り切れば、変わるかもしれない。
ここで変えるしかない。
意志を固め、泣き出す男の子を抱える。
「そいつは俺の息子だ。下ろせ」
「無理です」
「家族の問題に入ってくんな」
「もう十分みんなを巻き込んでいる」
「ふざけんな!そいつがいなければ全部解決するんだ」
もう自分もボロボロなのに走って距離を詰めてきた。
男の子は向けられた殺意に、震えている。
早く警察来てくれよ。
この場を収めてくれよ。
誰か……じゃない。
僕が助けるんだろ。
あの男性、この子のお父さんを止めればいいんだ。
「成田さん、お願い。その子を連れてできるだけ遠くへ」
「瑞季くんは!?」
「僕は大丈夫」
「でも……」
「早く!!」
「う、うん」
成田さんは震える男の子を抱き締めて走った。
僕はその場に残り、男性を迎え撃つ。
自分の余命は見えない。
僕は今日ここで死ぬ運命なのかもしれない。
もしそうだとしても、小学生の子たちが生きることができたならば僕の勝ちだ。
「どけ」
「どかない!」
血のついたナイフがキラッと光る。
怖いけど、それ以上に怖いものがある。