君が僕にくれた余命363日


子ども達がどんどん前に向かって走る中、足が遅いらしく距離ができてしまった女の子が勢いよく転ぶ。

火事場の馬鹿力、なんて言うけれど本当にあるらしい。

転んだ女の子をすぐに抱えて再び走る。

必死に走って曲がり角を右へ曲った。

その瞬間、後ろのほうでテレビでしか聞いたことがないような、アニメやドラマかと思うクラッシュ音が響く。


振り返ると大型トラックが閉ざされたシャッターにぶつかり止まっているのが見えた。

あそこはすでに閉店しているから、お客さんもいない。

見たところの被害は大きいけど、人に対する被害はないだろう。

よかった。
抱えている女の子を下ろす。


「こ、こわか……ふえぇぇん」


子どもらしく泣き出す女の子の頭を落ち着かせるために撫でる。

【0】

……まだだ。
油断はできない。

変えるためにはすべてから守らなければいけない。

まだ、何かが起こる可能性がある。

ここにいる小学生の子たちの余命が増えるまで、気は抜けない。

どうすればいい?


「びっくりした」
「こわかった」
「心臓止まるかと思った」


呼吸を整えている小学生の子どもたち。
ここでみんなバラバラになればいいのかな。

こんな田舎の町で1日に複数の事故や事件が起こるなんて考えにくい。

みんながバラバラにわかれれば……。


「おい……動き出したぞ……!」
「早く警察呼べ!!」


後方で声が聞こえる。
この騒ぎに野次馬が集まってきていた。

他の人は?
この小学生の子たちの余命は知っているけど、他の人は知らない。

もしかしたら被害が大きいかもしれない。
この子たちだけではないのかもしれない。

頭が真っ白になる。

僕はどうすれば……。


「瑞季くん!!」
「え……成田、さん……?」


思考がショート寸前の時、まっすぐな声が僕の名を呼んだ。

顔を上げると、前髪が思いきり上がっても気にせず全力疾走をしている成田さんがこちらに向かっていた。

足が速い彼女はすぐに僕の目の前まで来て、あたりを見回す。