「お兄さん、お姉さんのこと好きなの?」
「え?」


黄色い帽子から長い二つに結んだ髪の束が出ている、高学年であろう女の子。

驚いてその女の子をじっと見る。


「お兄さんは、あのお姉さんのことがす……」
「ちょっと待って!」


改めて言い直す女の子の言葉を遮る。

何を言っているんだ、この子は。


「違うの?」

不思議そうに首を傾げる女の子は、純粋そのもので頭から否定するのも大人げなく思った。

女の子の前に行き、しゃがんで目線を合わせる。


「どうしてそう思ったの?」
「だって、お兄さんずっとお姉さんのこと見てるもん。すっごくやさしい目で見てる。パパとおんなじ」
「そっか」
「それで、そうなの?」
「んー……そうだね」
「わっ」
「内緒ね」


人差し指を口元に持っていき、わかりやすく内緒とポーズをする。

僕らしくないな。
子どもって怖い。

子どもの前じゃ嘘がつけないんだから。

純粋な瞳の前では隠すことなんてできない。

両手で口を隠し何度も頷く女の子に思わず笑みがこぼれた。


「瑞季くん?何話してるの?」


それに気づいた成田さんが僕に声をかけてきた。

女の子に目線をやると、ばっちりと目が合う。

その瞳があまりにも綺麗で透き通っていて、その綺麗さになんだか僕の心まで浄化され綺麗になったように感じた。


「内緒だよ。ね?」
「うん」


口を押さえたまま、首が落ちるのではないかと思うほど何度も激しく頷く。

そこまでして隠そうとしている女の子の頭に思わず手を置いた。

かわいいな。くらいの軽い気持ちで。

だけど、その瞬間心臓が止まるかと思った。


【0】


触れた瞬間に見えた数字に頭が真っ白になる。