君が僕にくれた余命363日


「お兄さんもびっくりしてた」
「お兄さんは誰?お姉さんの友達?」
「んーっとね、どうしようっかな。言っちゃおうかな」
「どうせ友達でしょー」
「違うよ。ボーイフレンドだよ」
「ボーイフ、エンド?」
「惜しい。ボーイフレンド」


友達じゃん。

それは普通に友達ってことじゃんか。

何をもったいぶって、小学生相手に簡単な英単語使ってるんだ。

一瞬しぶるから何を言うか少しヒヤッとしたけど、相変わらずだった。


「すっごく仲良しってことだよ」
「男と女で仲良しなの?」
「そうだよ。みんなも一緒に帰ってるじゃん」
「でも、これは集団下校だから仕方なく。ほんとは一緒になんて……」

女の子が言いながら見るのは、背の高い男の子。


「なんだよ」
「べ、べつに何でもないし!こっち見んな」
「はぁ?見てねぇよ。見てたのはお前だろ」
「うっさい」


なるほど。
子どもってこんなにわかりやすいんだな。

男の子と目が合い、顔を真っ赤にして焦って悪態をつく女の子。

けっこう口調荒く返されているけど、この女の子は彼のことが好きなのだろう。

小学生ってそういうところあるし。

口が悪くても丁寧でも関係ない。

むしろこういう好きな子ほど素直になれずに、つい強く言ってしまう年頃でもあるのだろう。

言い合いをしながらも、男女ともうれしそうにしている様子が5年以上前に見た光景と似ている。

僕には関係ない話で、外から見ているだけだったけど。


「かわいいなぁ」


成田さんも気づいているのか、声に出して微笑ましく見ている。

そんな彼女の横顔を僕は見ていた。

誰とでも仲良くできて、常に周りは笑顔であふれている。

そんな彼女と気がつけばいつも一緒にいる。

僕がここまで特定の誰かといることになるとは思わなかった。

想像もしていなかった。
こんな今が訪れることを。

だから僕は、この今がずっと続けばいいと願っている。

強く、願っているんだ……。