「お兄さんもびっくりしてた」
「お兄さんは誰?お姉さんの友達?」
「んーっとね、どうしようっかな。言っちゃおうかな」
「どうせ友達でしょー」
「違うよ。ボーイフレンドだよ」
「ボーイフ、エンド?」
「惜しい。ボーイフレンド」


友達じゃん。

それは普通に友達ってことじゃんか。

何をもったいぶって、小学生相手に簡単な英単語使ってるんだ。

一瞬しぶるから何を言うか少しヒヤッとしたけど、相変わらずだった。


「すっごく仲良しってことだよ」
「男と女で仲良しなの?」
「そうだよ。みんなも一緒に帰ってるじゃん」
「でも、これは集団下校だから仕方なく。ほんとは一緒になんて……」

女の子が言いながら見るのは、背の高い男の子。


「なんだよ」
「べ、べつに何でもないし!こっち見んな」
「はぁ?見てねぇよ。見てたのはお前だろ」
「うっさい」


なるほど。
子どもってこんなにわかりやすいんだな。

男の子と目が合い、顔を真っ赤にして焦って悪態をつく女の子。

けっこう口調荒く返されているけど、この女の子は彼のことが好きなのだろう。

小学生ってそういうところあるし。

口が悪くても丁寧でも関係ない。

むしろこういう好きな子ほど素直になれずに、つい強く言ってしまう年頃でもあるのだろう。

言い合いをしながらも、男女ともうれしそうにしている様子が5年以上前に見た光景と似ている。

僕には関係ない話で、外から見ているだけだったけど。


「かわいいなぁ」


成田さんも気づいているのか、声に出して微笑ましく見ている。

そんな彼女の横顔を僕は見ていた。

誰とでも仲良くできて、常に周りは笑顔であふれている。

そんな彼女と気がつけばいつも一緒にいる。

僕がここまで特定の誰かといることになるとは思わなかった。

想像もしていなかった。
こんな今が訪れることを。

だから僕は、この今がずっと続けばいいと願っている。

強く、願っているんだ……。