彼女にとって、前世で愛した和臣(かずあき)とその生まれ変わりである『倉本裕一郎』という人間はこの世で最も尊い存在であり、もはや宗教にも(ひと)しい彼らが「カラスは白い」と言うならば、創造神が何と反論しようとも「生きとし生ける全てのカラスの色は“白”である」と拡声器で主張するだろう。
 ……近所迷惑になるのでやめていただきたいが。

 故に、裕一郎が主張する考えであれば恋幸にとってはいつでも正しいものでしかないのだが、同時に、彼の言う事を「説得力の欠片も無い」と思う日など天地がひっくり返ってもやって来ないことも確かだった。


「……当然、私にも人並みに欲はありますが……小日向さんは、私の大切な人ですから。だからこそ、何をしても良いわけがないんですよ」
「たい……っ!?」
「うん? 大切な人でしょう? 何か間違っていますか?」