――ジリリリリ!

 耳元で、けたたましくアラームの音が鳴り響く。

「んぐ……」

 うめくような声を上げ、瑞樹はゆっくりと重いまぶたを開いた。あくびを()み殺しながら目覚まし時計のアラームを止め、時間を確認する。朝の六時半。いつも通りの起床時間だ。

 油断すると落ちてくるまぶたを気合で持ち上げ、瑞樹はカーテンを開ける。

 外は快晴。今日は梅雨(つゆ)の晴れ間らしく、早くも太陽が空の高いところから()げ付きそうなほどの光を放っている。

 雨の日は外に出たくなくなるが、これだけ強い日差しというのも気が滅入(めい)る。夏本番になればさらに暑さがきつくなると思うと、それだけでため息が出た。

「ねむ……」

 とりあえず洗面所で顔を洗って、しっかり目を覚ます。タオルを手に取りながらふと鏡を見れば、慣れ親しんだ地味顔と目が合った。童顔(どうがん)気味なところが、少しコンプレックス。
 まあ、自分の顔を見ていてもつまらないだけなので、さっさとキッチンへ向かう。

叔父(おじ)さん、次に帰ってくるのは今月の終わりだっけかな」

 (つぶや)きながら、瑞樹は冷蔵庫に貼ったカレンダーを確認する。

 今現在、この家にいるのは瑞樹だけ。家主である叔父は、仕事の関係で一年の半分くらいを海外で過ごしているのだ。今は亡き両親――瑞樹から見れば祖父母――から受け継いだ立派な一軒家を持っているのに、かわいそうな話である。
 そんな状態なので、瑞樹としても、今や半分ひとり暮らしといった気分だ。家事だって、同年代の中ではできる方だろう。

「朝ご飯は……適当でいいか」

 冷蔵庫の中から、納豆とヨーグルトと牛乳を取り出す。茶碗にご飯をよそい、よく混ぜた納豆をかければ、朝食の完成だ。ヨーグルトと牛乳を一緒にお盆に載せて、居間まで運んでいく。

 朝食を食べ終わったら、洗面所で歯を(みが)いて、くせ毛気味の髪をブラシで軽く整える。制服に着替えたら、通学用のリュックサックを背負って家を出た。
 同時に、一瞬にして体から汗が噴き出てくる。

 やる気一杯の太陽にうんざりしながら、瑞樹は陽炎(かげろう)立つ道を駅に向かって歩き始めた。