「それがさ、学校側には伏せられていたんだけど、すごい経歴の持ち主だったんだ。その数がハンパない。それを見てほしくて、こうやって敢えて紙にプリントしてきたんだ」

　すごいターゲットを見つけたと言わんばかりの、目を輝かせて話す翔太。確かに渡されたプリントを見てみると、書かれている今までのコンテストの略歴はすごいものだった。

「中学生の時にのど自慢の全国大会で優勝している。有名芸能事務所の音楽アーティスト発掘オーディションでも優勝している。調べてみると他にもすごい受賞歴がどんどん出て来た。高校生にしては驚く数だ」

「そんなすごい賞を獲っているのにプロの歌手になれないってどういうことだ？　そこまでの経歴があれば、どこかの事務所からのスカウトだってありそうだろ」

「蒼生、そこなんだよ」

　もったいぶった言い方の翔太に、みんなの視線が集まった。

「プロの歌手になること、事務所からのスカウト、すべて両親が断っているみたいなんだ」

「えっ！？　だってこんなすごい才能があるのにそれを断るなんて！」

「そうだよねぇ？　子供の夢なのに」

「新菜、それ、アタシも思ったんだよ。調べてみたらさ、この春見詩音って子の家、家庭崩壊してるんだ」

「家庭崩壊？」

　ひな子の言葉に耳を疑う。