「誰だ?」
「2年E組の春見 詩音」
「E組って、陸は春見詩音のこと知ってるか?」
「春見詩音……そんなやついたかな」
「陸くん……」
陸くんはこの間の水沢奈乃香の時もだけど、同じクラスの生徒のことをなんにも覚えてないな。
「春見詩音……“うた の おと”か」
プリントに書かれていた名前を読み上げ、蒼生くんは言った。
「ああ、あの書き込みをしてきた本人に間違いはないと思う」
「写真で見ると、かなり地味な感じー。歌手になりたいって本当かなぁ?」
プリントを覗き込むように見る柚のキツイ一言。相変わらず思ったことを口にしてしまう性格が、見た目の可愛さをぶち壊していると思った。でも、柚が言うように、そこに写った写真はあきらかに華やかな歌手を目指す人物には見えない。なんというか同じ高校生なのに疲れ果てているような感じに見えた。